2022.01.28

食品表示法改正の留意点と2大重要ポイントをわかりやすく解説

消費者が食品を選ぶ際に、その安全性を確かめる大切な判断基準となっているのが食品表示です。その表示基準を定めた食品表示法は、施行後にも数回の改正が行われています。
今回の記事では、消費者はもちろん食品関連事業に携わるみなさんにとっても重要な食品表示法の、改正の留意点についてわかりやすく解説します。

「食品表示法」とは何か?はこちらの記事をどうぞ。

改正食品表示法の留意点

食品表示法については2017年から2020年にかけて数回の基準改正が行われ、多くはすでに施行ました。また、施行されているけれど経過措置中のものと、今後施行されるものもあります。
食品関連事業者は取り扱っている食品の表示に関して、従来から変更されている点に留意することが重要といえるでしょう。
主な留意点は以下のとおりです。

  • 精米時期の表示の改正
  • 農産物漬物の内容量表示の改正
  • 生水牛乳の追加による表示の改正
  • 指定成分等含有食品表示の義務化
  • 食品添加物表示の改正
  • 原料原産地表示制度の開始
  • 遺伝子組換え任意表示制度の改正

それぞれの留意点について、項目別に見ていきましょう。

精米時期の表示の改正

米に関して精米年月日の表示の古い商品が売れ残ると、物流上の問題や食品ロスの問題が生まれる原因となります。それらに対応するため、精米年月日表示を年月日に加えて年月旬でも表示できるよう改正されました。
2020年3月27日公布および施行で、経過措置は2022年3月31日までとなっています。

農産物漬物の内容量表示の改正

計量の仕方に関する法律である計量法にて、商品の実態をきちんと反映した見直しが行われました。それを踏まえて、農産物漬物については計量法の定める計量方法にもとづいて内容量を表示するように改正されています。
2020年3月27日に公布されて同日に施行されており、すでに統一済みです。

生水牛乳の追加による表示の改正

「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」が改正されて、「生水牛乳」が乳の範囲に追加されました。それを受けて食品表示も、「生水牛乳」を乳の範囲に追加するように改正されています。
2020年3月27日に公布されて、2020年6月1日に施行されました

指定成分等含有食品表示の義務化

食品衛生法の改正によって、指定成分等含有食品にかかわる健康被害情報の届出制度が創設されました。指定成分等含有食品とは、何らかの特別な注意を要する成分を含んでいる食品を指します。
届出制度創設を受けて、食品表示においても指定成分等含有食品である旨や、食品衛生上のリスクを抑える意味から特別な注意を要とする成分である旨の表示が義務化されました。
2020年3月27日に公布され、2020年6月1日に施行されています。

食品添加物表示の改正

「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」を踏まえて、「人工」あるいは「合成」と冠されている食品添加物の用途名や一括名について、人工や合成という用語を削除しました。用途名とは着色料や甘味料、保存料などの名称で、一括名とは香料などの名称です。
2020年7月16日に公布されて同日に施行されました。経過措置期間は2022年3月31日までとなっています。

原料原産地表示制度の開始

「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」を踏まえて、加工食品(輸入品を除く)すべてにおける原料原産地表示が義務化されました。
具体的には、製品に占める重量の割合がもっとも高い原材料が表示の対象となっています。
2017年9月1日に公布されて同日に施行されました。経過措置期間は2022年3月31日までとなっています。

遺伝子組換え任意表示制度の改正

従来の遺伝子組換えに関する任意表示制度では、大豆やとうもろこしについて分別生産流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混ざっている割合が5%以下の場合は、遺伝子組換えではない旨の表示が可能とされていました。
しかし「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」を踏まえて基準が厳しくなり、以下の2点の改正が行われています。
1:分別生産流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混ざっている割合が5%以下の場合は、適切に分別生産流通管理を行っているという、事実に即した表示を義務付け
2:遺伝子組換え農産物の混入が不検出の場合のみ、遺伝子組換えではない旨の表示が可能
2019年4月25日に公布され、2023年4月1日に施行されました。経過措置としては2023年3月31日までに改正前の食品表示基準で表示した食品は、同年4月1日以降も販売が可能とされています。

改正食品表示法の2大重要ポイント

改正食品表示法の中で、特に重要なポイントは以下の2つです。

  • 重要ポイント1:アレルギー表示の改
  • 重要ポイント2:栄養成分表示の徹底

    それぞれを詳しく見ていきましょう。

重要ポイント1:アレルギー表示の改善

アレルギーを引き起こすアレルゲンは、卵やエビ、カニ、小麦やそばをはじめ、たくさん存在します。食品表示においてこれらの表示が間違っていた場合、場合によっては健康被害が発生しかねません。

国内の食品リコールのうち、およそ4分の1はアレルギー表示のミスに起因するといわれています。消費者が商品を安心して選べることを目的として、食品表示法の改正の一環で新しいアレルギー表示が義務化されました。
従来は場合によって省略できましたが、新しいルールでは含まれるアレルゲンを必ず表示することが義務となっています。

わかりやすい例を挙げてみましょう。
従来では、ロールパンには小麦が含まれる、あるいはオムレツには卵が含まれることなどの表示に関しては、常識的に理解できる範疇であるため省略できました。
しかし改正後は、そういったアレルゲンを含む原材料については、「ロールパン(小麦を含む)」や「オムレツ(卵を含む)」などのように、逐一明記しなければなりません。
もしくはパッケージの「一括表示欄」において、原材料名の末尾部分にアレルゲンとして「一部に小麦を含む」や「一部に卵を含む」と記載する必要があります。
ただし、複数の原材料または添加物を使用し同じアレルゲンが含まれているケースでは、いずれかの原材料または添加物にその旨を表示すれば、ほかは省略できます。

従来でも、アレルギー反応に特に気をつけるべき子ども向けの食品では、アレルゲンを目立つように表記することがありました。
このたび、食品表示として原則的にアレルゲンが明確に表示されることで、消費者が食品を選ぶ際の安全性が確実に高まります。

重要ポイント2:栄養成分表示の徹底

食品表示法改正によって、従来は任意だった加工食品と添加物の栄養成分表示が義務化されました。
表示が義務づけられている栄養成分は、以下の5つです。

  • 熱量(エネルギー・カロリー)
  • たんぱく質
  • 脂質
  • 炭水化物
  • ナトリウム(塩化ナトリウム=塩のことで食塩相当量と表示)

    そのほか、表示するよう奨励されている栄養成分は以下の2つです。
  • 飽和脂肪酸
  • 食物繊維

     

任意項目として、ビタミンや糖質、コレステロールなどの健康増進に影響がある部分の表示も可能になりました。

また、商品サイズによって表示スペースが小さくなる場合を考慮し、レイアウトの改善や非表示可能な項目等も明記されています。原材料と添加物は明確に区分するなどの、誤解を避けるためのルールも設けられています。

ほかには機能性食品が、食品売場の陳列棚の中でも多くの割合を占めるようになってきたことを踏まえた改正もあります。機能性食品は原則的に、表示内容に嘘がないことを販売開始の60日前までに消費者庁に届け出なければなりません。

食品表示基準に違反した場合のペナルティ

食品関連事業者が食品表示基準に違反した場合のペナルティについて、以下の3つのパターンに分けて、内容別に見ていきましょう。

  • 食品関連事業者が表示基準を守らない場合
  • 食品関連事業者が不適切な表示の食品を販売した場合
  • 食品関連事業者が措置命令または業務停止命令に違反した場合

表示基準を守らない場合

食品関連事業者が表示基準を守らない場合には遵守するように指示を受け、指示を受けた旨を公表されます。その指示に従わない場合は、指示に従うよう命令を受け、命令を受けた旨を公表されます。
その命令に違反した個人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金に処せられます。

食品衛生法の第11章の第71条から第79条に書かれている罰則規定の対象となる違反行為を、わかりやすい言葉で紹介します。

不適切な表示の食品を販売した場合

食品関連事業者が食品を摂取の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、基準に沿った適切な表示がなされていない食品を販売した場合や販売しようとする場合には、食品の回収やそのほか必要な措置命令または業務停止命令を受け、命令を受けた旨を公表されます。

内閣府令で定める、食品摂取の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、基準に沿った適切な表示がなされていない食品を販売した場合には、個人は2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、あるいはその両方を科されます。法人は1億円以下の罰金に処せられます。

表示されるべきとされている原産地(原材料の原産地を含む)について虚偽の表示がある食品を販売した場合には、個人は2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金に処せられます。

措置命令または業務停止命令に違反した場合

食品関連事業者が食品の回収やそのほかの措置命令または業務停止命令に違反した場合は、個人は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、あるいはその両方を科されます。法人は3億円以下の罰金に処せられます。

なお、健康増進法や食品衛生法においても、一部の虚偽または誇大な表示あるいは広告は禁止項目です。また、不当景品類及び不当表示防止法や特定商取引に関する法律においても、取引における不当な表示等について禁止されています。

引用

まとめ

食品表示法を正しく理解しましょう

食品表示法は従来の食品表示に関する法律「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の3つ中の食品表示に関する部分を統合して整理し、食品表示基準を改正したものです。2017年から2020年にかけて改正が数回行われ、すでに大部分が施行されています。
不適切な食品表示は、場合によっては人命に関わる健康被害を発生させるリスクがあるといえるでしょう。そのため食品に不適切な表示をしたり、それを販売したりした個人や法人には、厳しいペナルティが科されます。
食品関連事業者のみなさんは従来からの改正点によく留意して、適切な食品表示および販売が行えるよう取り組んでください。

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