2024.01.26

リテールメディアとは?消費の多様化とパーソナライズ化を攻略する小売企業のためのマーケティング戦略

ここ最近、リテールメディアへの関心がかなり高まってきています。

海外では実際にリテールメディアが成功をおさめた実績もあり、日本でも小売市場において新しい市場が生まれる可能性に期待が寄せられています。

この記事ではリテールメディアについて、リテールメディアがどのようなものなのか、リテールメディアのメリットや具体的な取り組み事例について解説をしていきます。

リテールメディアとは?

リテールメディアにおける情報・広告の流れリテールメディアとは、小売・流通企業が運営する店舗やECサイトで外部向けに提供している広告媒体のことです。

ECサイトに表示されるバナー広告や動画広告、店舗のデジタルサイネージなど至る所でリテールメディアを利用することができます。

小売企業の持っているPOSデータなど消費者に関わる情報を活用しながら、メーカーはよりピンポイントに広告を出稿することができるようになります。

次になぜリテールメディアが注目されているのか、その背景を解説します。

小売企業におけるデータ活用の広がり

注目されている理由は大きく2つあります。

1つ目は小売企業における消費者に関するデータの活用がしやすくなったという点です。

データ管理システムやAIの発達を受けてPOSデータなど消費者に関わる情報を、需要予測や販売計画に高い精度で活用しやすくなりました。

また、メーカーは店舗で自社製品がどれだけ売れたかという具体的なデータを取得することができません。

消費者に一番近い立場である小売企業とメーカーが組むことでよりパーソナライズ化された広告を打つことができるため、今までの不特定多数に向けた莫大なコストをかけた広告戦略とは全く違うものになるという期待ができます。

サードパーティークッキーの規制

2つ目の理由は、サードパーティークッキー(3rd party cookie)の規制です。

クッキーとはWebサイトに訪問したユーザーの情報を一時的に保存するシステムのことですが、クッキーにも種類があります。そのうちの一つがサードパーティークッキーです。

サードパーティークッキーとは、実際に訪れているWebサイトと異なるドメインから発行されるクッキーのことです。

例えば、訪問しているサイトに違うドメインから配信されている広告が掲載されていたとします。サードパーティークッキーはその広告を配信しているサーバーから発行されます。この手法を用いることで広告元のドメインがユーザーを判別し、広告を載せているサイトであればどこでもユーザーに興味・関心がある広告を出稿することができるのです。

このような広告はリターゲティング広告と呼ばれプライバシーの観点から規制が進んでいます。クッキーの取得には必ずユーザーに許可を取らなければいけないという法律も海外では定められた例もあります。

使用率の高いブラウザのSafariではサードパーティークッキーの廃止、Google Chromeでは段階的に廃止が進んでいるという状況もあります。

対して小売企業の持つデータはファーストパーティーデータ(1st party date)と呼ばれ、自社で集めた情報のため信頼性が高く、デジタル技術の発達で精度も高くなっています。そのため、安心して利用することのできるファーストパーティーデータに注目が集まっているのです。

各支店から見たリテールメディア

小売企業

小売企業にとってリテールメディアの最も大きなメリットは、広告による収益を得られるようになることです。加えて広告を出すことによって商品そのものも売上が上がり、さらなる発展に繋げることができます。

広告料と商品の売上アップで自社の業績が良くなり、メーカーも商品の売上が上がればお互いwin-winの関係を築くことができます。

メーカー(広告主)

小売企業の所有しているファーストパーティーデータを使用できるという点が小売企業にとってメリットがあります。

不特定多数に向けて宣伝をするテレビCMや街中の広告とは違い、消費者のデータに基づいたよりピンポイントな広告を出すことができます。

また、小売企業で広告を出すことによってその広告によってどれだけ売上が伸びたのかというデータもより信頼性の高いものになります。

消費者

自分が興味・関心のある商品についての広告を受け取れるというメリットがあります。

また、広告だけでなく購買に基づいたクーポンやレシピ動画など生活に役立つ情報を受け取ることができるかもしれません。

具体的なリテールメディアの例

アプリ連動型の広告配信

小売企業では買い物に使えるポイントカードアプリなど、何かしらのアプリを配信している企業は多いです。そのアプリ内にメーカーが出稿した広告を表示させるというアプリ連動型の広告配信を実際に行なっている企業があります。

広告配信の後、実際に消費者がその商品を購入したかどうかまで追うことができるためかなり細かい分析も可能です。

他にも来店時にアプリへ、その人個人に向けた情報を提供するという方法もあります。パーソナライズ化することでより消費者の心に刺さる広告を配信することができます。

デジタルサイネージ

デジタルサイネージとは、リアル店舗でモニターを使用して広告を表示させることをいいます。

最近はコンビニでも見かけるようになりました。レジの真上に設置されていた、コンビニに来た消費者の誰もが目にすることになります。

広告を配信している時間と、商品の売上が伸びている時間を照らし合わせれば広告効果の仮説も立てやすいのではないでしょうか。

ECサイトでのスポンサー広告

ECサイトで表示するバナーや動画広告をスポンサーとしてメーカーが出稿するという例もあります。

商品カテゴリーに基づいた広告を出すことによって、興味・関心の高いユーザーへピンポイントに広告を表示することができます。

広告主にスポンサーとなってもらうため、小売企業は広告による収益を回収することができます。

実際に大手ECサイトではスポンサー広告が導入されています。サードパーティークッキー規制が進行するいま、ECサイトと直接協力をして広告を出すことはとても重要になってきます。

リテールメディアがもたらす広告革命

デジタル時代の新市場

リテールメディアは新たな市場になる可能性が高いと期待されています。

通常、商品を売ることで収益を生み出すビジネスモデルに加えて広告による収益も得ることができれば今までになかった市場が生まれます。

リテールメディア市場を生み出すためには、デジタル技術の活用が必要不可欠です。特にID-POSをはじめ消費者によりパーソナライズ化できるデータの活用が鍵になってきます。

また、小売企業の中にも広告に特化した部署を設けるなどすでに動きはじめている企業も存在します。海外では成功事例もあるため、日本国内でも急速に広まりつつあります。

オンラインとリアルの融合

リテールメディアはオンラインとリアルの相乗効果を出すことができます。

消費者から集めた情報をもとにアプリやECサイトで広告を表示して来店を促す、消費者が店舗に到着したら広告などの情報をアプリへ表示するというパーソナライズ化された顧客体験を提供することができます。

リアル店舗もECサイトも両方持っている企業では、どちらでも広告枠を設けることができるのでより多くの広告による収益を得ることができます。

コロナ禍でオンライン化が進みましたがリアル店舗での買い物もまだまだ人気はあり、オンライントとリアルの融合をすることでこれまでにない顧客体験を発見できるかもしれません。

まとめ

リテールメディアとは?消費の多様化とパーソナライズ化を攻略する小売企業のためのマーケティング戦略

リテールメディアとは、小売・流通企業が運営する店舗やECサイトで外部向けに提供している広告媒体のことです。

リテールメディアは、データ活用技術の発達やサードパーティークッキーの規制により注目が集まっています。小売企業にとっては広告事業という新たな市場を開くことのできるチャンスです。また、メーカーにとっては今までと全く違うより効率的な広告戦略へ転換できる可能性があります。

キーワード

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