2024.04.05

ダイナミックプライシングとは?小売でも導入実績のある最新の価格設定の手法をご紹介します

ここ最近、ダイナミックプライシングを導入する企業が増えています。

特にスポーツ観戦やライブのチケット、ホテルの宿泊料などエンタメやサービス業で積極的に採用されています。

ダイナミックプライシングを上手く導入することができれば、企業と消費者どちらにも大きなメリットをもたらすことができるのです。

この記事ではダイナミックプライシングについて詳しく解説していきます。ダイナミックプライシングを取り入れるべきかどうか検討の際にお役に立てていただければ幸いです。

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは、市場の状況に合わせて臨機応変に商品やサービスの価格を調整することです。「変動料金制」などと言われることもあります。

人件費や設備費など商品やサービスを提供するまでの原価に基づく価格設定ももちろん必要ですが、ダイナミックプライシングはさらに市場の状況に合わせて価格を変動させていきます。

ダイナミックプライシングの仕組みを説明したイラストです

ダイナミックプライシングそのものは最近生み出された新しい取り組みというわけではありません。

例えば小売店舗なら閉店時間が近づくにつれ売れ残ってしまった商品を値引きする、スポーツ観戦やライブであればステージに近い座席の価格を上げてステージから遠い座席の価格を安くする、というように日常生活でよく見かける事例もあります。

ダイナミックプライシングを導入して市場の状況に合わせて価格を変動させることにより収益を今までより最大化することができます。

ダイナミックプライシングが注目される理由

AIなど技術の発達によって注目を浴びている

ここ最近ダイナミックプライシングが注目を浴びている理由は、AIなどデジタル技術が発達してより正確な分析が行えるようになったからです。

これまでは人間の経験や勘に基づく判断から価格調整を行うことが多くありましたが、AIの発展により価格も自動的に決めることができるようになったというところが今のダイナミックプライシングのポイントです。

小売企業でも導入されています

実際にダイナミックプライシングを導入している小売企業も存在します。

国内の大手小売では価格を自動で導き出せるAIシステムが自社開発され、適切な売価変更が可能になりました。ベストタイミングにベストな価格で割引を行うことによって利益を最大限伸ばすことができるという効果に期待できます。

また、海外の大手小売では在庫数や賞味期限に基づきリアルタイムで価格を調整するという取り組みがされています。利益の最大化はもちろん、電子棚札を使うことによって値引シールやPOPの作成を削減することもできます。

ダイナミックプライシングのメリット

収益の最大化

市場の状況に合わせて臨機応変に価格を変動させれば通常売れ残ってしまったり、もしかしたらもっと高い価格で売れるかもしれないという機会損失をなくすことができます。

特に小売店舗におけるダイナミックプライシングは、適切な値引をすることによって売れ残りをなくし収益を増やす効果に期待できます。

一つの商品やサービスが複数の価格ポイントを持つことが特徴です。

ダイナミックプライシングによる収益最大化の説明イラスト

在庫リスクを減らす

ダイナミックプライシングによって商品の売れ行きが良くなれば在庫も減るため、在庫リスクの抑制になります。

収益の最大化と同様に需要が低いタイミングで価格を下げることによって購入者が増えれば在庫を減らすことができます。

在庫が減ることによって廃棄ロスも減り、エコにもつながります。

ダイナミックプライシングのデメリット

導入コスト

AIサービスの導入が必須のため、導入コストがかかります。既存のサービスを利用するか自社開発をするか導入には様々なパターンがありますが、いずれにしてもコストがかかります。

またAIサービスを利用する際には担当者も必要になってくるため、教育コストあるいは採用コストもかかります。

ダイナミックプライシングによって増えた収益が導入コストに見合うものかどうかは事前に検討が必要ですが、未熟な分野のため予測が難しいところがネックです。

消費者の不満につながる可能性がある

ダイナミックプライシングによって価格を上げた際、購入しようと思っていた人が値上げに不満を抱く可能性があります。

また、価格変動を何回も行うことでどのタイミングで買えば良いか分からなくなり混乱を招く可能性もあります。

いつも同じ価格で売っている状態から、タイミングによって価格が変動する状態になるストレスに慣れるまで時間はかかるかもしれません。

小売企業におけるダイナミックプライシング

食品ロスの削減

ダイナミックプライシングにより売れ残りをなくすことができれば食品ロスの削減につながります。

現在、日本における食品ロスは年間522万トンあると言われています。これは、1日で大型トラック(10t)約1,430台の量になります。

522万トンという数値は、家庭から捨てれられる食品と事業で捨てられる食品が合わさった数値です。家庭系の食品ロスは247万トン、事業系の食品ロスは275万トンあります。

世界全体の食品ロスは9億トンになります。日本は世界で14番目にロスが多い国というのが現状です。この膨大な量の食品ロスをなくすためにもダイナミックプライシングは大切です。

作業の効率化

AIが価格を自動で決定することにより、人が行なっていた作業を減らすことができます。

働き方改革や人手不足で現場のオペレーションを組み立てるのが難しくなっていくなか経験や勘を持ち合わせた人材は貴重でしたが、ダイナミックプライシングのおかげでオペレーション改善につながっている事例もあります。

値引の判断やPOPの作成をなくすことができれば作業時間が減るため人手不足のいま役に立つのではないでしょうか。

どのような設備・システムが必要?

AIシステム

最新のダイナミックプライシングにおいてAIシステムの導入は必要不可欠です。

消費者の購買データなど様々なデータを集め、それを分析し適切な価格を決定するわけですが、データの分析と適切な価格をAIに自動で決めてもらいます。

集めたデータをAIに読ませて学習させる工程も必要です。

AIシステムは専門会社が開発している既存のシステムを使うか、自社開発を行なっていくという導入方法があります。

電子棚札

電子棚札も導入することで更なる効率アップが狙えます。

電子棚札とは、通常紙に印刷された値札を電子化したものになります。値札の形をした小さなモニターを棚につけます。

紙に比べて1枚のコストは高くなりますが、一度導入した後は故障しない限り何回でも表示の変更が可能です。そのため、値札をつくる手間がなくなり紙の使用量も減ります。

電子棚札に表示する情報はシステムと連携させて書き換えることができるため、リアルタイムに自動的に価格変更を行なったり、通常価格と期限間近の割引価格の2パターンを同時に表示させたりと、これまでと違ったオペレーションを実現させることができます。

まとめ

ダイナミックプライシングとは?小売でも導入実績のある最新の価格設定の手法をご紹介します

ダイナミックプライシングとは、市場の状況に合わせて臨機応変に商品やサービスの価格を調整することです。

ダイナミックプライシングを行うことで、収益の最大化や在庫リスク減少などのメリットを出すことができます。AI技術の発展によってより正確なデータ分析ができるようになってきたため、自動で適切な価格設定ができるダイナミックプライシングが注目されています。

キーワード

  • ダイナミックプライシング
  • AI
  • 電子棚札