グリーントランスフォーメーションは、企業にとって重要な取り組み課題の一つです。
単なる環境への配慮という枠にとどまらず、世界規模での取り組みや消費者の行動の変化に伴った経営戦略として環境とビジネスを結びつける必要があるのです。
この記事では、グリーントランスフォーメーションについての基本的な情報や、小売・流通業界におけるグリーントランスフォーメーションについて分かりやすく解説していきます。
グリーントランスフォーメーション(GX)とは?
グリーントランスフォーメーションとは、環境負荷を大きく減らすことを起点に、エネルギーの転換やビジネスモデルの刷新、消費行動の変化を通じて持続可能な社会と企業価値を両立させる変革のことです。
デジタルトランスフォーメンションがDXと略されるのと同様に、グリーントランスフォーメーションもGXと略されます。
単なる環境対策ではなく、持続可能な社会と経済の両立を目指す経営戦略として位置付けられています。
なぜGXが必要なのか
地球環境の悪化が現実化するなか、環境への配慮が企業にも本格的に求められています。投資家や金融機関も企業のESGを投資の判断材料の一つにしつつあります。
また、消費者の価値観も環境重視へシフトしているため、環境に配慮した企業かどうかが消費者の購買につながります。
このように、単なる環境配慮の取り組みという枠にはとどまらないビジネスにつながる環境配慮の取り組みが求められているのです。
小売・流通業界でもGXは重要
小売・流通業界は、エネルギーの使用、物流、商品廃棄などの環境負荷が高い業界の一つです。
また、消費者との接点が多いためGXへの取り組み姿勢がブランドイメージや購買行動に強く結びついています。
そのため小売・流通業界にとってもGXは重要です。次のトピックから、小売・流通業界に関わりの深い分野でどのような取り組みができるかみていきたいと思います。
店舗・流通の脱炭素化
エネルギー消費量の見える化
IoTセンサーやスマートメーターを活用することにより、電気・ガス・空調などの使用状況をリアルタイムで監視、可視化できます。
例えば、冷蔵ショーケースの稼働状況や電力使用量をモニタリングして、過剰な部分があれば節電など無駄な稼働を削減します。
AI空調も利用されており、天候や混雑状況に応じて空調の温度を自動調節することで電力を削減することが可能です。
EV配送や共同配送によるCO2削減
商品などの配送に使用する配送車両をEV車や水素を燃料とする車両に切り替えることでCO2を削減します。
また、近隣店舗同士、他企業と連携を行う共同配送も最近は注目されています。一台に積める荷物の量が増え積載効率が上がって、走行距離・便数がともに削減できます。
自然冷媒の冷蔵庫・冷凍機の導入
冷蔵ショーケースなどで使われるフロン系の冷媒は温室効果ガスです。このガスをCO2やアンモニアなど自然霊媒に切り替える取り組みが広がっています。
切り替えには設備投資が必要になりますが、省エネ性能が高く、GXの取り組みとして高い評価を得ています。
商品・パッケージのグリーン化
環境配慮型商品の仕入れ比率を開示
仕入れている商品について、再生素材やどんな認証がされているかなど環境配慮の基準を導入し、ESGレポートなどで基準を満たす商品の仕入比率を開示するという取り組みもあります。
どのような取り組みを行なっているか誰でも分かるかたちにすることで、消費者や投資家への透明性を高めて信頼を獲得することができます。
詰め替え・量り売り・バルク販売の導入
詰め替え商品の充実、ナッツなどの量り売りを導入することによってプラ容器削減やゴミの削減をすることが可能です。
実際に専用容器持ち込みによる量り売りを展開しているスーパーマーケットもあり、再利用可能な容器の導入が進んでいます。
環境ラベリング
環境配慮を行なっていることをラベルやPOPなどで、より消費者に分かりやすいかたちで表示することも大切です。
例えばCO2の排出量やプラスチックの削減率など、どのような効果があるのか具体的に示すことができれば分かりやすくなります。
買い物をする時にどのような環境配慮が行われているか見えることによって、消費者が環境負荷の少ない選択をしやすくなり、購買行動が変化します。
顧客との共創によるGX推進
エコバッグ持参・マイボトル割引
エコバッグ、マイボトルの利用でポイント付与や割引をするという取り組みを行なっている企業もあります。
専用アプリでもマイボトルの利用を促す販促機能を設けたり、より消費者がグリーントランスフォーメーションへの参加がしやすい環境づくりもされています。
また、オリジナルのエコバッグやマイボトルを販売することによって買い物の楽しみを増やしたり、新たな市場を築くチャンスともなり得ます。
購入履歴から「環境貢献スコア」を通知する仕組み
消費者の買い物データを分析し、買い物がどれだけ環境配慮に影響しているか数値で可視化できるようにスコアや証明書を発行する取り組みもあります。
アプリ上でどれだけエコにつながる商品を購入したかスコア化、状況に応じて得点を付与するといった事例もあります。
アプリだけでなく、レシートにスコアを表示するという方法も考えられます。
サステナブル商品を軸にしたコミュニティ形成
ただ環境配慮型の商品を販売するだけでなく、その価値観を共有できる消費者と企業がつながり続ける場所を形成するという方法もあります。
SNSで情報を発信しながら消費者とつながる、店舗でGXに関連するイベントを開催するなど、オンラインでもオフラインでもコミュニティを築くことが可能です。
コンテストを開始して特典を贈呈したり、消費者アンケートなどで一緒にビジネスを作り上げていくことでカスタマーエクスペリエンスの向上にもつながります。
GXの成功事例
無印良品の詰め替えとリユースの体系的推進
無印良品はグリーントランスフォーメーションに繋がる商品を多く展開しています。
シャンプーや化粧品などの詰め替え商品の展開、お菓子やナッツなどのバルク販売、マイボトルでの購入促進、衣料品や家具の回収、リユースとリサイクルに関するプロジェクトなど多岐にわたります。
また、グリーントランスフォーメーションの側面だけでなく無印良品のブランドイメージもあらわれており、ブランディングとしても成功しています。
セブン&アイのCO2排出可視化ラベリング
セブン&アイは、CO2排出の見える化に取り組んでいます。
一部のプライベートブランド商品に製造から配送までのCO2排出量を明記したり、パッケージに使われている再生素材の使用率やリサイクルマークを印刷して消費者の選択をサポートしています。
また、パッケージの軽量化やバイオマス素材など開発段階からグリーントランスフォーメーションの設計を行なっています。
まとめ
グリーントランスフォーメーション(GX)とは?ブランディングや経営テーマにも関わりが深い環境への取り組みのGXを解説します
グリーントランスフォーメーションとは、環境負荷を大きく減らすことを起点に、エネルギーの転換やビジネスモデルの刷新、消費行動の変化を通じて持続可能な社会と企業価値を両立させる変革のことです。
小売・流通業界は、エネルギーの使用、物流、商品廃棄などの環境負荷が高い業界の一つです。店舗・流通の脱炭素化、商品・パッケージのグリーン化、顧客との共創によるGX推進など様々な取り組みを行うことができます。実際にGXを推進・実行している企業もあるため、今後ますます取り組みは盛んになっていくでしょう。
キーワード
- グリーントランスフォーメーション
- GX
- 小売・流通