ここ数年の間にAIの技術はめざましく進歩しました。
実際に日常生活の中でもAIを活用されている方も多いのではないでしょうか。もちろんビジネスの世界でも多岐にわたり活用されています。
この記事では流通業界に焦点を当て、AIがどのように活用できるか、実際にどう活用されているかをご紹介していきます。
そもそもAIとは
AIとは、Artificial Intelligenceの略で人工知能を意味し、人間のように学習・推測・判断・行動ができるシステムや技術のことをいいます。
例として、データからルールや傾向を学ぶ機械学習、脳の神経回路を模したニュートラルネットワークを使用して複雑なパターンや特徴を学ぶディープラーニング、カメラ画像や音声を分析して識別する画像認識・音声認識などが挙げられます。
最近話題の生成AIとは？
生成AIとは、文章・画像・音声・動画など、コンテンツを生成するAIのことです。特に最近ではChatGPTなどが話題になっています。
会話形式で質問ができたり、文章や要約の生成、絵や写真のような画像も生成することができます。また、ナレーションなどの音声生成、リアルな動画やアニメーションも生成することができます。
従来の検索エンジンによる検索とは異なり、会話のような自然な言葉で指示を与えることができ、回答もピンポイントなものを返せるのが特徴です。
AIが注目される理由
生成AI（ChatGPTなど）が実用化レベルに
2022年以降、ChatGPTをはじめとした生成AIの登場により、日常レベルで簡単にAIを使える時代になりました。
無料で利用できるプランもあり、調べ物や文章作成・要約など実際に使用されている方も多いのではないでしょうか。
ビジネスにおいては、単純作業だけでなく、判断・予測を行う複雑な業務も実用化できるレベルにまで達しています。特に人手不足が叫ばれるいま、人手不足解消や生産性向上の次なる一手として注目を浴びています。
膨大なデータを活かせる時代に
スマホやIoT、POSシステムなどから膨大なデータが蓄積されています。
今までの分析システムでは難しかった複雑なデータやパターンもAIなら分析ができ、新たな発見や予測をすることができます。
「今までこうだったから今後もこうなる」という感覚的なパターンや熟練者の勘で行っていた業務も、AIならパターンを明確化にして誰でも行えるようにしてくれる可能性が高いのです。
また、せっかくデータはたまっているのに活用できていないという勿体無い状況も解決してくれるかもしれません。
AIを活用することによって何ができる？
需要予測の高度化
需要予測とは、POSデータや天気、日付、イベントなどのデータをもとに、どの商品がいつどのくらい売れるかを予測することです。
AIによってこの需要予測のレベルを格段に向上させることができます。
需要予測かが高度化することにより、食品ロス削減、欠品の予防や在庫の最適化など多くのメリットが出ます。どのようなデータを学習させるかというデータの整理整頓や突発的な変化には対応が難しいという課題もあります。
チャットボットのお問い合わせ対応
AIがユーザーのお問い合わせに自動で対応するチャットボットも実現されています。
時間に制限がないため24時間対応が可能で、チャットボットの段階でお問い合わせが解決することによって受付窓口の負担が減ります。
最近はECサイトや自社のコーポレートサイトにお問い合わせ用のチャットボットを導入する企業が増えています。定期的なメンテナンスとどこまでをチャットボット対応の範囲とするかの見極めが求められます。
ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシングとは、市場の状況に合わせて臨機応変に商品やサービスの価格を調整することです。「変動料金制」などと言われることもあります。
その価格調整をデータ活用によってAI化することができるのです。特にECサイトや旅行・ホテル業界などオンラインで決済を完結できるビジネスでの導入が進んでいます。
ただ、価格変動や過剰な調整は企業イメージの損失につながる場合があるため、価格の調整幅は慎重に見極める必要があります。
パーソナライズ
ユーザーの購買・閲覧履歴などをもとに、そのユーザー個人に合った情報をAIに提案させることができます。
例えば、ECサイト利用時に表示される「あなたにおすすめ」などのリコメンド機能の実装や、メールマーケティングでの個別クーポン、アプリでの個人向け販促などが挙げられます。
よりパーソナライズされたマーケティングを行うことでカスタマーエクスペリエンスが向上し、ファンの獲得につながります。
物流の最適化
AIが最適な配送ルートや積載を導き出してくれます。また、倉庫に置く在庫の適正数量や需要予測もAIを活用することができます。
配送やピッキングの効率化をすることにより、配送コストの削減、納期短縮や人手不足の解消の対策となります。
交通状況や天候など外部要因に左右されやすいため、そういった状況の変化に柔軟に対応できるシステムの構築が大切です。
画像認識と無人店舗
AIを搭載したカメラで商品棚を監視し、欠品や補充を自動で検出できるようになります。また、どの商品がカゴに入れられたかカメラで検知することにより、レジのない店舗も実現可能です。
自動検知やレジレス店舗によって従業員の負担軽減や人手不足の解消につながります。
ただ、初期導入コストが高く、顔認識などプライバシーに関わる部分があるため実装は簡単ではありません。
最近の活用トレンド
生成AIの社内FAQ、マニュアル活用
社員からの質問や問い合わせ対応をAIを使って行うことで、マニュアル検索やFAQを自動化させることができます。
生成AIの活用によって業務効率の改善、知識・情報共有の質が大幅に向上させることができるのです。
例えば、店舗スタッフ向けの業務マニュアルや新人研修用のマニュアルなど、活用できる場面は多岐にわたります。
AIカメラとIoTによるリアルタイム在庫管理
店舗や倉庫のカメラ映像をAIが分析することにより、欠品や商品の位置、在庫数などを自動的に認識します。また、IoTと連携することでより強固なデータ把握が可能となります。
コンビニやスーパーなどお店の品出し指示や倉庫在庫のリアルタイム監視、万引きや不審行動の検知といった活用方法があります。
サプライチェーン全体のAI最適化
サプライチェーンとは、製品やサービスが消費者に届くまでの一連の流れのことです。大まかに、原材料調達→製造→流通→小売→消費者という流れになります。
この流れの中にはさまざまな人や業務が関わっており、そのプロセスをAIが分析することによって適切な生産数を導き出したり、いつどこで販売すべきかなどサプライチェーンを全体的に改善することができるのです。
需要予測や発注の自動化、物流のルート最適化、販促タイミングの割り出しなど、各点におけるポイントをAIが最適化し、全体の改善に繋げていきます。
小売業のAI活用例
ユニクロの需要予測ー
ユニクロでは、AIを活用して需要予測、サプライチェーン最適化が行われています。AIを使い世界中の売上・気温・イベント情報を分析し、どこで売れるかをリアルタイム予測しています。
生産量や物流をあらかじめ調整することができ、在庫削減かつ欠品防止につながります。また、販売戦略にも分析は反映され、売れる商品をはやく提供することも可能となっています。
ローソンの棚卸・品出し
ローソンでは、AIをフル活用した店舗を東京の高輪にオープン予定です。
AIサイネージが導入され、カメラが手に取った商品を自動的に検知してその商品に合ったクーポンなどの情報がサイネージに表示されます。
また、リモート接客やAIによる自動品出しなども導入し、店舗における従業員の作業負担を目指しています。
Amazonの無人店舗
Amazonでは、Amazon Goという無人店舗が営業されています。自動決済機能が導入されていて、入店から退店までレジを通すことなく可能です。
レジ業務の効率化、レジに並ばない・セルフレジの作業をしなくてよいというカスタマーエクスペリエンスの向上につながります。
Just Walk Outというシステムが導入されていて、カメラやセンサーによって消費者の行動を追跡し、手に取った商品や戻した商品を自動的に把握することができる仕組みです。
まとめ
