最近、スマート〇〇という言葉をよく聞くようになりました。
スマートフォンやスマートウォッチなど私たちの日常に関するものからスマートファクトリーやスマートシティなどビジネスに関するものまで、あらゆるものがスマート化しています。
食の分野でもスマート化は進んでいて、生産に関わる部分でスマート農業・水産業・畜産が特に注目を浴びています。
この記事ではスマート農業・水産業・畜産とは何か、スマート化のメリットやそれぞれの例についてお伝えしていきます。
スマート農業・水産業・畜産?
スマート農業・水産業・畜産とは、ロボット・IoT・AIなど最新の技術を活用した産業のことです。
最新の技術を活用し、人による作業を減らす、より品質の高い作物の生産やロスを削減する、誰でも作業をできるようにするなど、それぞれの産業に関する課題を解決することができます。
私たちの生活にとって農業・水産業・畜産は欠かせない産業であり、持続させるためにもスマート化は間違いなく重要な要素です。
なぜスマート化が必要なのか
スマート化が必要な理由の一つは、人手不足です。産業に関わる人の高齢化や後継者がいないという状況は長いあいだ問題となってきました。
また、気候変動もスマート化が必要である理由の一つです。異常気象による農作物の不作や海面温度上昇による魚の不漁など、大きな問題を抱えています。
このようなこれまで解決することのできなかった難しい問題を解決するために、各産業のスマート化が注目を浴びています。
スマート化のメリット
生産の効率化
例えばスマート化によって作業を自動化できれば、人手をかける必要がなくなります。あるいは人による作業をなくすことができればその分の時間を他の業務に費やすことができます。
他にもスマート化によって大規模生産やロスを削減することができれば、生産数や販売数をアップさせることも可能です。
生産の効率化が実現すれば今までの問題が解決するのはもちろん、ビジネスチャンスも増えて新規参入で各産業が盛んになるかもしれません。
付加価値の向上
スマート化でこれまで以上に高度な管理ができるようになれば、生産物の付加価値向上につながります。
データ活用やAIによる分析を活用した質の高い栽培や養殖、育成によって高品質の生産が可能になります。また、データに基づいてしっかりと管理されていれば消費者により安心していただけるようになります。
最新技術の導入にはコストがかかりますが、上手くいけばこれまで実現することのできなかった価値を新しく生み出すことができるかもしれません。
スマート農業の例
ドローンによる作業の効率化
最近はドローンによる農業も増えています。
ドローンを利用して空中から農薬や肥料を散布することができるようになったため、ピンポイントへの散布や作業の軽減に役立っています。
また、ドローンをUAVとして活用し、農地や作物の状況など情報を集めることも可能です。地形や肥沃度、土壌の水分や作物の倒状などをデータ化して可視化することにより、正しい判断がしやすくなります。
農機の自動運転
農機にオートステアリング機能をつけることによって、操縦者が乗っているだけでハンドルを持つ必要のない運転ができるようになり、作業の負担軽減につながります。
また、目視監視は必要ですが無人で自動走行可能な農機やリモコン操作だけで田植えができる田植え機もあって、次々と人手がかからなくなってきています。
人手不足を解決するためにもロボット化は重要な取り組みなのです。
水田の水管理の自動化
水田にとって水の管理はとても重要です。水位や水温に注意をしなければならず、気候によっては収穫が減ってしまいます。また、水管理にはかなりの時間がかかります。
そんな難しい水田の水管理を自動化することによって、作業時間とロスの削減を実現することができます。
管理機器を水田に設置し、気象情報などのデータをアプリで連携させることにより、遠隔自動制御を可能にします。
スマート水産業の例
人工衛星による海面のセンシング
「しきさい」という人工衛星を利用して宇宙から海面を観測することで、さまざまな情報を得ています。海面温度やプランクトンの量などを捉えるセンシングを行っています。
しきさいは他にも陸や大気に関する情報もセンシングすることができ、とても大切な役割を担っている衛星です。
それぞれの情報はオンライン上に公開されています。下記サイトはしきさいのポータルサイトで、各情報を確認できるリンクが設置されています。
加工の自動化
魚の加工も自動化が進んでいて、人手不足や重労働軽減のために様々な工程でロボットが利用されています。
発達したデータ活用やAIによって難しい細かい作業でもロボットが行えるようになりました。
魚を切り身にする加工、魚介類の不要な部分を取り除く加工、商品の盛り付けなど繊細な作業も自動化できるようになってきています。
バイオテクノロジー育種
バイオテクノロジーの利用も進められています。
DNAマーカーにもとづいたマーカーアシスト選抜を行えば、成長がはやい個体と病気に強い個体を選んで交配させることにより、成長がはやくて病気に強い個体を生み出すことができます。
DNAマーカーを利用することで見た目では判断できなかった情報を解析することが可能になり、育種の幅が広がります。
スマート畜産の例
センサーによる家畜のモニタリング
家畜や畜舎をモニタリングすることで家畜の健康を守ることができます。
家畜にウェアラブルセンサーをつけることによって状態を24時間モニタリングし、異常があればアラート通知を発信します。
畜舎の状況も同様に遠隔でのモニタリングが可能となっています。温湿度や空気中の成分を計測することで環境を把握し、変化を即座に捉えることができます。
搾乳・給餌のロボット化
搾乳と給餌をロボット化することによって、人の手で行なっていた作業を自動化することができます。
労働時間の削減になりますが、人と家畜の接触が減るため感染症リスクを下げることができるため衛生面でもメリットがあります。
ロボットに限った話ではありませんが、スマート化は導入コストがかかるため事前の試算と検証が大切です。
スマート化に関連するキーワード
デジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術を活用してサービスやビジネスモデルを変革し、業務・組織・企業文化・風土を変え、競争の優位性を確立することです。
デジタル技術を産業に取り入れて課題を解決し、労働の仕組みやビジネスモデルを大きく変えていくことがスマート化において大切です。
「試しにデジタル技術を導入してみた」、「評判が良いからこのデジタル技術を導入してみた」ではなく、そのデジタル技術を導入してビジネスに変革が起こせるのか、自分の業務範囲だけでなく会社や生活全般の流れを捉えていく必要があります。
スマートフードチェーン
スマートフードチェーンとは、生産から消費までのデータを収集・連携させることによって生産を高度化し、販売の付加価値を高め、流通全体を最適化することです。
生産段階のスマート化によってこれまで見えなかったデータを見える化することができれば、生産の常識を変えることができるかもしれませんし、販売の方法も変わっていくかもしれません。
流通を良くしていくためにも産業のスマート化は重要な役割を担っているのです。
ブルーエコノミー
ブルーエコノミーとは、海洋の環境を持続させながら海洋に関する経済活動も行っていくことです。
環境に関する活動を「グリーン」と称するのはよく聞きますが、海洋に関しては「ブルー」という言葉が使われます。
海洋プラスチックや海面の水温上昇など様々な問題を解決するために、新しい技術の開発やそれに対する投資も始まっています。
スマート水産の活用を進めていくことで、ブルーエコノミーも活発になっていきます。様々な企業がスマート化の取り組みを行っているため、今後ブルーエコノミーもますます盛んになっていくでしょう。
まとめ
進化する食材の生産技術。スマート化する農業・水産業・畜産についてご紹介します
スマート農業・水産業・畜産とは、ロボット・IoT・AIなど最新の技術を活用した産業のことです。
人手不足や気候変動といった難しい問題を解消するために、各分野のスマート化が注目されています。作業自動化による生産の効率アップ、データ活用による商品の付加価値向上などに期待できます。既に多くのデジタル技術が活用されており、今後のビジネスモデルの変革が期待できます。
キーワード
- スマート農業
- スマート水産業
- スマート畜産