インバウンドという言葉は、私たちの生活の中でもニュースなどでよく見たり聞いたりするようになりました。
様々な業界・企業がインバウンドに力を入れ、都心部だけでなく地方でもインバウンドは注目されています。
この記事では、インバウンドとはそもそも何か、注目される理由や小売業におけるポイントなど基本的なことをお伝えしていきます。
インバウンドとは?
インバウンドとは、外国人が日本へ観光に来ることを意味します。インバウンド消費やインバウンド需要といった言葉もあるように、事業においてもインバウンドは重要視されています。
宿泊業界、飲食業界、レジャー業界、小売業などインバウンドと関わりのある業界はたくさんあり、とても大きな市場となっています。
反対に、アウトバウンドは日本から海外へ行くこと、つまり日本人が海外へ旅行に行くことを意味します。
インバウンドの現状
上のグラフでは省かれていますが、2020年〜2022年はコロナ禍ということもあり外国人観光客は激減していました。
コロナ禍が落ち着いた2023年からは外国人観光客の数も戻り始め、2023年9月ごろよりコロナ禍以前まで回復をしています。
そして2024年現在では、コロナ禍以前をさらに上回る勢いで推移しています。年間累計は過去最速で3000万人を突破しました。このままいけば2024年は、過去最高の2019年を上回る見込みとなっています。
過去最高の勢いのインバウンドですが、コロナ禍明けということだけが理由ではありません。
インバウンドが注目される理由
人口減少と経済の活性化
日本は少子高齢化が進み、人口が減少傾向にあります。人口が減るということは消費活動も少なくなり、経済成長も低下してしまいます。
人口が減っていく中で国内向けにどれだけ企業努力をしても、成長限界は下振れをしているわけですから歪な事業展開になりかねません。
そうした中で消費者の数を増やすためにもインバウンドは重要です。実際に日本は国としてもインバウンドへの取り組みを積極的に行っています。
インバウンドが活性化すれば、新しい事業の展開や雇用機会の増加など、様々な経済効果が見込めます。
旅行先としての人気
旅行先として日本は人気があるというのもインバウンドが注目される理由の一つです。
アメリカの大手旅行雑誌のコンデナスト・トラベラーが発表した読者が選ぶ2024年の人気国ランキングにおいて、日本は1位に選出されています。
文化や自然風景、サービスの質の高さ、治安の良さなど、他国では味わうことのできない魅力が日本には溢れています。
参考:Conde’Nast Traveler『Top Countries in the World: Readers’ Choice Awards 2024』
ビザの免除措置
ビザ(査証)とは、他国に入国する際に必要になる許可証のことです。
もちろん外国人が日本に入国する際にも必要になりますが、一部の国に対しては短期滞在におけるビザ免除措置を行っています。
また、ビザの取得をオンライで行えるようになっているため手続きが以前よりも簡単に行えます。入国に関する手続きの手間をできるだけ省いていくことで、より旅行のしやすい国になっていくのです。
インバウンドに向けた日本の取り組みの例
日本はインバウンド回復戦略を取り組んでいます。ここでは下記のサイトを参考に、どのような取り組みがあるか一部の例をご紹介します。
アドベンチャーツーリズム
アドベンチャーツーリズムとは、自然・アクティビティ・文化体験のうち2つ以上で構成される旅行のことを言います。欧米圏で発展してきた旅の形式であり、巨大な市場となっています。
通常の観光だけでなく、自身の変化や視野を広げること、学びなどを目的としており、どのような体験ができるかが重視されています。
アドベンチャーツーリズムをする旅行客の消費額は通常の旅行の約2倍とされており、国としてもアドベンチャーツーリズムを推進しています。
歴史的資源を活用した観光まちづくり
お城やお寺、古民家など歴史的資源を中心に、周辺の歴史的資源も活用した観光コンテンツを構築し、観光まちづくりを進める取り組みも行っています。
今後の目標として、2030年までに取組展開地域を400地域に拡大する計画があります。また、取組地域の高付加価値化を目指す面的展開地域も100地域を目指しています。
MICEの推進
MICEとは、多くの集客交流を見込めるビジネスイベントの総称です。
企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を並べてMICEと呼ばれています。
通常の観光とは違いますが、日本に人が集まるという点や、そこから派生する付加価値が注目されています。
小売企業におけるインバウンドのポイント
多言語対応やキャッシュレスなど接客の強化
外国人観光客がお店に来て快適に買い物をするためには、多言語化とキャッシュレス化が必要です。
英語表記の看板や英語や中国語を話すことのできる従業員の雇用など、多言語対応が求められます。
また、現金を日本円に両替する必要のないキャッシュレスも導入は必須ではないでしょうか。海外ではキャッシュレス化が大幅に進んでいる国もあるため、クレジットカードやスマートフォンでの決済が行えるレジがあると便利です。
Webサイト・SNSを活用した情報発信
Webを利用すれば、全世界に向けて情報を発信することができます。
自分たちでは当たり前のことでも、外国人観光客にとっては新鮮で旅行したいと思えるようなことかもしれません。
マーケティングをしっかり行う必要はありますが、InstagramやFacebookといった海外で人気のあるSNSで情報発信をしたり、YouTubeに動画を投稿することもインバウンド対策になります。
人気のある商品に力を入れる
買い物を目的として日本へ旅行に来る外国人観光客もいます。
特に人気があるのは、お菓子や食品、化粧品や服、民芸品といった日本の独自性が強く出ている商品です。こういった商品の販売に力を入れていけば、インバウンド売上の成長に期待することができます。
また、外国人観光客が何を購入しているのかデータで取れることができればマーケティングに役立てることができます。
インバウンドの課題
オーバーツーリズム
インバウンド市場が大きくなるのは経済が成長して喜ばしいことですが、その反面、オーバーツーリズムという課題も抱えています。
オーバーツーリズムとは、観光地に観光客が集中して、住民の生活や観光地の景観などに悪影響をもたらすことです。公共交通機関の混雑、道路の渋滞、騒音問題など、人が多いことにより引き起こされる問題は多々あります。
対策も難しく、極端な対策をしてしまうと観光客が減ってしまう可能性もあります。対策として、これまで目の向けられてこなかった観光資源の有効活用など、観光を分散させるような取り組みを行っている地域もあります。
二次交通
二次交通とは、空港や駅から観光地までの交通のことです。
特に地方では二次交通が不便なところが多く、行きづらいならと避けてしまう機会損失につながる可能性があります。
タクシーやバスといった比較的導入がしやすい交通手段を整えるのも対策の一つですが、人手不足や違法な白タクといった問題も出ています。
人手不足・多言語対応
地方へのインバウンド分散が注目される一方、対応できる人材が揃っていない、多言語に対応できていないという問題もあるようです。
人手不足はインバウンドに限らず事業展開において日本が抱えている問題でもあるため、対策が難しくなっています。
多言語対応は、旅館・ホテルやお店だけでなく、公共交通機関や各観光箇所における案内表示など、地域全体での対応が必要になります。
インバウンドが推進される中、まだまだ解決すべき課題がたくさんあるといったところにも目を向けなければなりません。
まとめ
インバウンドとは?現状や注目される理由、小売業におけるポイントなどをわかりやすく解説します
インバウンドとは、外国人が日本へ観光に来ることを意味します。
2024年の外国人観光客数は、過去最高の2019年を上回る見込みとなっています。インバウンドが注目される理由として、人口減少と経済の活性化・旅行先としての人気・ビザの免除措置などが挙げられます。インバウンドの課題はまだ多く、日本政府もインバウンドを推進する戦略をとっています。
キーワード
- インバウンド
- アドベンチャーツーリズム
- キャッシュレス