ここ数年、世界規模で食の技術革命が急速に進められています。
食の技術は一般的にフードテックと呼ばれ、「Food」と「Technology」を掛け合わせた言葉です。食に関する最新の技術を駆使して、食の課題解決を試みる企業が増えてきています。
様々な食のトレンドがありますが、今回は小売企業も注目すべきトピックを5つキーワードとしてご紹介いたします。
なぜ世界で”食”が急速に進化しているのか
ECの市場規模
フードテックの市場規模のポテンシャルはとても高く、将来的に世界規模で700兆円まで達するだろうと言われています。
食は私たちの暮らしにおいて必要不可欠な行為であり、食の価値が向上することによって人々がさらに食へお金を投資するようになれば、市場規模もその分大きくなります。
フードテックに対する投資額も大きくなっており、2012年では31億ドルだったのが2022年にはおよそ10倍の296億ドルとなっています。2021年では532億ドルとさらに倍の金額にまで到達しました。
出典:農林水産省『フードテックに関する動向説明資料』
アフターコロナで変わるライフスタイル
コロナ禍を経て私たちの食に関するライフスタイルも変化しました。
特にウーバーイーツや出前館のようなデリバリーサービスが盛んになり、テイクアウトサービスを提供するお店も圧倒的に増えました。テイクアウト専門店もいまや当たり前です。
アフターコロナで外食産業も活気を取り戻しましたが、家で食事や料理を楽しむことに価値を見出す人が増えたのは間違いありません。
デリバリーサービスが盛んになったことによりデジタル分野に巨額の投資がされ、家で調理を楽しめるようにスマートキッチン分野の開発も進んでいます。
いま世界規模で食の価値をアップデートするタイミングが来ているのです。
健康問題とフードデザート
食による健康問題は世界規模で問題視されています。肥満、糖尿病などの健康問題です。
現代の食は豊かになりましたが、食べ過ぎによって肥満が引き起こされたり、偏った食事によって糖尿病が引き起こされおり、その治療に関するコストも巨額のものとなっています。
また、フードデザートも問題になっています。
フードデザートとは、新鮮で健康的な食材を手に入れることが難しい地域のことです。お店の少ない過疎地や所得の少ない貧困地域に多く、カロリーの高い加工食品に依存しがちになり、低栄養状態になってしまいます。
食品サブスク
食品サブスクとは、月額制で食品が定期的に届くサービスです。動画や音楽などコンテンツ系で盛んになったサブスクが食業界にも続々と登場しています。
新鮮な野菜、冷凍された弁当や調理するだけの状態になったミールキット、お菓子やパンなどのグロッサリー系というように食品全般に関してサブスクは網羅されています。
最近はLTVも注目されており、顧客にいかにして自社のサービスを継続して利用してもらうかを重視する企業が増えています。
「時短=手間を完全になくす」が全てではない
サブスクを利用することによって、買い物へ行く手間を省くことができます。また、調理済みの冷凍弁当や食品が届くようになれば調理の手間すら要りません。
しかし、調理する楽しさが見直されているということも無視はできません。調理すること自体の楽しさの再発見もちろん、家族で一緒に料理をすることでコミュニケーションが増えます。
共働きが当たり前になって時短料理の価値が重要視されてきましたが、アフターコロナのいま料理を楽しむというニーズもそこに加わりました。
代替肉/培養肉
代替肉/培養肉とは
代替肉とは、植物由来の原料を使用して肉を再現した食品です。肉そのものではなく、味・食感・見た目を可能な限り肉に近づけています。
培養肉とは、豚や牛などの特定の細胞を培養することによって作られた肉です。家畜を屠殺する必要がなくなります。
代替肉や培養肉の登場により、家畜の飼育に関するコストや環境問題、増え続ける人口に対して肉の供給をどうするかという問題の解決に期待が高まっています。
大豆ミート
私たちが身近で購入できる代替肉の一つが大豆ミートです。
こちらはスーパーマーケットでもよく売られており、名前の通り大豆を原料としています。味・食感・見た目はかなり肉に近く、ヘルシーで調理の幅も広いため肉と同じ感覚で食べることができます。
高タンパク質、コレステロールが含まれていない、食物繊維が豊富というのが大豆ミートの特徴で栄養も申し分ありません。
急速冷凍
急速冷凍とは、食品の中にある水分が氷に変化する温度帯を30分という短時間で通過する冷凍方法のことです。
食品にはたいてい水分が含まれています。冷凍する際、冷凍にかかる時間が長ければ長いほど水分が凝固してできる氷結晶も大きくなります。
氷結晶が大きくなりすぎると食品の組織を傷つけ、解凍する時に味や栄養が抜けてしまう原因になります。急速冷凍はこうした冷凍食品に関する問題を解決できるのです。
急速冷凍のメリット
前述した通り、急速冷凍をすることで味や栄養の抜けをこれまで以上に防ぐことができるので冷凍食品の品質を向上させることができます。
鮮度の維持もできるようになり、これまで流通させることのできなかった地域への拡販や食品ロス・廃棄ロスの削減にもなります。
また、冷凍時間も短縮されるため効率化につながり、生産数アップや人手不足解消につながります。
ダークストア
ダークストアとは、EC事業において商品をピックアップするための小型の配送拠点です。
通常のお店のように消費者が来て買い物をするのではなく、商品陳列のように保管されている商品をピックアップしてエンドユーザーへ配送します。
コロナ禍で閉店した店舗を活用
配送拠点や倉庫と聞いて思い浮かべるイメージは広い土地に立つ大きな建物という方も多いのではないでしょうか。
ダークストアはどういった大型拠点とは違って小型の拠点で、都市部の土地が狭いところでも設営することが可能です。
帝国データバンクによると、新型コロナが要因で倒産した飲食店は2023年9月時点で1957件にも及びます。このように閉店した店舗を活用してダークストアとして配送拠点にできるのではないかという期待も高まっています。
参考:帝国データバンク『「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査』
配送のスピードアップ
ダークストアはラストワンマイルの課題解決にもなります。
都市部など人口の多い場所でも無理なく拠点を設けることができ、発注が来てからすぐに消費者の家まで届けることが可能になります。
最近はEC・アプリで注文してから短時間で商品を届けるという”クイックコマース”の取り組みも注目されており、ダークストアは相性がぴったりです。
キッチンOS
キッチンOSとは
キッチンOSとは、IoT化した調理機器とアプリを連携させるデータ基盤のことです。
アプリでレシピを選び、そのレシピを調理機器へ送信することによってレシピ通りに調理機器を動かすことが可能になります。
ネットで無数のレシピを確認できるとはいえ実際に調理を行うのは人であり、温度調整や調味料の必要量など感覚的な部分は個人に頼らざるを得ません。そのため焼きすぎて焦がしてしまった、調味料を入れすぎて味が濃くなってしまったという経験はよくあると思います。
こうした料理の失敗をなくし、誰でも美味しく楽しく調理ができるように料理をサポートしてくれるのがキッチンOSです。
食卓の見える化
また、キッチンOSの強みは料理のサポートだけではありません。収集したデータを活用すればこれまで見えなかった食卓のデータを見える化することができます。
例えば実際に家庭でどのような料理が流行っているのか、平日と休日の料理の違い、どれだけ飲料が消費されているかなど、食に関するあらゆるデータを明らかにすることができます。
こうした食卓のデータが見える化できれば、食品メーカーも小売企業も今までとは全く違った販売戦略をとることができるようになります。
キッチンのスマート化が進めば、”食”ビジネスも大きな変化をすることは間違いありません。
まとめ
食のトレンドを探る!小売企業も注目すべき最新の”食”に関するキーワード5選
ここ数年、世界規模で食の技術革命が急速に進められています。食に関する最新の技術を駆使して、食の課題解決を試みる企業が増えてきています。
食の技術は一般的にフードテックと呼ばれ、「Food」と「Technology」を掛け合わせた言葉です。食に関する最新の技術を駆使して、食の課題解決を試みる企業が増えてきています。フードテックの市場規模のポテンシャルはとても高く、将来的に世界規模で700兆円まで達するだろうと言われています。
キーワード
- 食品サブスク
- 代替肉/培養肉
- 急速冷凍
- ダークストア
- キッチンOS