2025.05.02

オムニチャネルとは?オンライン時代に欠かせない戦略について分かりやすく解説します

いまや「オムニチャネル」という言葉はごく一般的になりました。特に小売業界や流通業界に関わっていれば必ず耳にすると思います。

実際にオムニチャネルは現代のビジネスにおいて欠かせない要素です。

この記事では、オムニチャネルについての説明や注目されている背景など基本的なことから最近の動向まで、オムニチャネルを知る上で欠かせない情報をお伝えしていきます。

オムニチャネルとは?

オムニチャネルとは、ユーザーとのあらゆるチャネルを連携させ、ユーザーにアプローチする戦略のことを言います。

チャネルは接点を意味し、リアル店舗・ECサイト・アプリ・SNS・広告などが挙げられます。販売を行う場所や情報をユーザーに届ける手段など、どれも企業とユーザーの接点です。

例えば、オムニチャネル化されていないとある小売業があったとしてそこでは、ユーザーが店舗に来る→商品を買う→帰宅するというシンプルな流れで買い物が進みます。

オムニチャネル化ができていれば、その流れの中で、アプリでお得な情報を流すという販売促進が行えますし、あらかじめアプリで店舗在庫を確認できるようにするというカスタマーエクスペリエンス向上の対策も取ることができます。

他にもここでは書ききれないほどの効果を出すことができます。このように、オムニチャネルを実現できていれば様々な販売戦略を築くことができます。

OMO、O2Oとの違い

よく似た言葉にOMOO2Oがあります。
ここではそれぞれとの違いを解説します。

OMOとの違い

OMOとは、Online Merges with Offlineの略で、ECやアプリなどオンラインにある消費活動を行う場所とオフラインのリアル店舗の垣根をなくし、カスタマーエクスペリエンスを向上させることを意味します。

オンラインもオフラインも全てという点ではオムニチャネルと同じですが、オムニチャネルはそれぞれを切り離して利用し、OMOでは全てをシームレスにつなげるというところに違いがあります。

O2Oとの違い

O2Oとは、Online to Offlineの略であり、オンラインを利用してオフラインへユーザーを促すことを意味します。

オンラインを利用するという点はオムニチャネルと同じですが、O2Oではあくまでもオンラインはオフラインへの誘導手段とされている点でオムニチャネルと違います。

オムニチャネルを進める中で、例えば、クーポンをSNSで配布して店舗への来店を促すなどオンラインからオフラインへの誘導をすることもあります。つまり、O2Oはオムニチャネルの一部と捉えることができ、オムニチャネルの中にO2Oが含まれているのです。

オムニチャネルが注目されている背景

自宅でSNSで情報収集をする女性

ECの拡大とスマートフォンの普及

近年、EC市場は年々拡大を続けています。特にコロナ禍以降、消費活動はネットショッピングにシフトしています。

BtoC-ECの市場規模グラフ

加えて、サブスクリプションやD2Cモデルも成長し、オンラインチャネルを強化する必要性が高まっています。さらにスマホの普及もあり、より手軽にどこにいてもECで買い物ができるようになりました。

リアル店舗に加えてECでの買い物が当たり前になったことで、どちらか一方だけの売上を最大化するのではなく、店舗とオンラインの連携による売上拡大が求められるようになりました。

また、スマホの普及により、モバイルを中心にオンラインとオフラインの体験をつなぐためにオムニチャネルは必要不可欠な戦略になっています。

消費の多様化・複雑化

ユーザーの消費活動の価値観や行動が多様化しています。

価格が安いから買うだけでなく、環境への配慮やブランドストーリーへの共感など様々なカスタマーエクスペリエンスが重要視されるようになってきました。

単純に店頭で見て買うパターンは少なくなり、オンラインで情報収集、SNSでレビューをチェック、それからリアル店舗で実物を確認するといったように複数チャネルを横断するパターンが増えています。

このプロセスに対応するためにも、オムニチャネルが必要不可欠となっています。

データ活用の重要性

いまや閲覧、購買、来店、問い合わせなどのユーザーの行動データがあらゆるチャネルで取得できる時代です。ECサイトの閲覧履歴、アプリの利用状況、リアル店舗への来店履歴など様々な情報をデータ化することができます。

また、サードパーティクッキーの規制が進む中、自社で取得したファーストパーティデータを活用する重要性が急速に高まってきています。

こうしたデータをチャネルごとにバラバラに管理するのではなく、一貫して管理することが求められます。最適なタイミングで、最適なチャネルで、パーソナライズ化された情報をユーザーに提供することでエクスペリエンスを高めることができるのです。

オムニチャネルのポイント

カスタマージャーニーの最適化

カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購入・リピートするまでの一連の体験のことです。商品自体の魅力も大切ですが、購入に至るまでの体験や購入した後の体験もしっかり考えていくのがカスタマージャーニーです。

オムニチャネルでは、どのチャネルを利用してもスムーズな体験を提供することが重要です。

チャネル間でのつながりを切らないこと、ユーザー目線でどのタイミングで何が必要か設計すること、タッチポイントごとの体験を統一することがポイントです。

カスタマージャーニーマップの例

CRMとデータ活用

CRMとは、Customer Relationship Managementの略で顧客との関係を深めるための管理手法です。

オムニチャネルでは、リアル店舗、ECSNS、アプリなど全チャネルのデータを統合し、一元管理することが必要不可欠になります。

各チャネルでそれぞれ取得したデータを繋ぎ合わせて活用してこそオムニチャネルです。データの取得だけでなく、どう繋ぎ合わせるか、それによって見えてくる新しい戦略がポイントです。

在庫管理・物流

オムニチャネルを実現するためには、在庫管理と物流をチャネル全体で最適化してくことも大切です。

例えば、オンラインで在庫チェックを行い、「在庫あり」と表示されていたのにリアル店舗へ行ったら在庫がなかったという事態が起こってはカスタマーエクスペリエンスが急低下してしまいます。

正確な在庫情報をリアルタイムで連携できるシステムの構築が求められます。

また、EC用の倉庫だけでなく店舗にも倉庫としての機能を設けることで、リアル店舗を持っていることの強みを発揮させることもできます。

店舗からオンライン注文を出荷することで近隣のユーザーに最速で届けることが可能となり、配送スピードのさらなる向上につながります。

オムニチャネルの成功事例

ユニクロ

大手アパレル企業のユニクロは、オンライン発注からの店舗受け取りや店舗在庫からの発送など、リアル店舗とECの在庫情報を完全に連携させています。

また、モバイルアプリを利用することで購入履歴やお気に入りの管理、店舗在庫のリアルタイム確認も可能です。

店舗を倉庫としても活用することで配送スピードやラストワンマイルの向上、ユーザーのデータを活用したパーソナライズ化に成功しています。

無印良品

無印良品は、MUJI passportというアプリを配信しています。

ECとリアル店舗をつなぐ役目を果たしており、ポイント付与や購入履歴の管理、店舗チェックインなどの機能を持っています。

期間限定で、アプリを使用しているメンバーにセールを行うといったオムニチャネルのメリットを活かした取り組みも行われています。

スターバックス

スターバックスもアプリを利用したオムニチャネル戦略が特徴的です。

アプリで事前に注文をしておくことで、並ばずに商品が買えるモバイルオーダーを行うことができます。ユーザーの位置情報と連携していて、来店するタイミングに合わせてドリンクを作るため、ユーザーはできたてを受け取れます。

購入履歴や店舗利用歴からパーソナライズ化されたクーポンの提供を行っており、カスタマーエクスペリエンスの向上にもつながります。

オンラインとオフラインのスムーズな連携がなされていて、ユーザーデータを活用したCRMもかなり精度が高いのではないでしょうか。

オムニチャネルの最近の動向

カフェでSNSを閲覧する男性

AIと生成AIの活用

AIを利用し、レコメンド機能やチャットボト、在庫の最適化や自動発注など幅広く利用されています。

例えば、購入履歴などに応じておすすめ商品のメールを生成したり、お問合せ時にチャットボットで問題を解決に導いたりと身近でも導入が進んでいます。

生成AIは文章や画像、動画などを自動生成される技術で、ここ最近かなりの速度で発達してきています。商品説明やバナーなど特にWebコンテンツにおける制作作業が効率化され、オムニチャネルの運用の効率も上がります。

BOPIS

BOPISとは、Buy Online, Pick Up In Storeの略語で、オンラインで商品を注文してリアル店舗で受け取ることを意味します。

BOPISの導入は年々進んでいて、実際にスーパーマーケットやドラッグストアなど様々なお店でピックアップ用のロッカーが置かれています。

ECサイトで購入した商品を近隣店舗で受け取ったり、事前にアプリで注文した商品を店舗の専用カウンターで受け取ることができます。ロッカーや店舗へ取りに行くという手間はかかりますが、ライフスタイルに合わせた受け取りや配送待ちの時間をなくすことが可能です。

BOPISはオムニチャネルにおいて、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ取り組みとして大きなメリットがあります。

ファーストパーティデータの活用

ファーストパーティデータとは、企業が直接収集した自社のユーザーデータのことで、購入履歴、閲覧履歴、アンケート結果など様々なデータあります。

ファーストパーティデータは、サードパーティデータの規制によって注目が高まっています。サードパーティデータとは、自社ではなく外部が提供するデータのことです。

特にオンラインではプライバシー保護のためにサードパーティクッキーの規制が進められており、サードパーティデータの利用が難しくなってきています。

オムニチャネルにおいてユーザーデータの活用はとても重要なため、ファーストパーティデータの活用が必要不可欠になってきました。

まとめ

オムニチャネルとは?オンライン時代に欠かせない戦略について分かりやすく解説します

オムニチャネルとは、ユーザーとのあらゆるチャネルを連携させ、ユーザーにアプローチする戦略のことを言います。

オムニチャネルが注目されている背景には、EC拡大とスマートフォンの普及、消費の多様化・複雑化、データ活用の重要性などが挙げられます。また、カスタマージャーニーの最適化、CRMとデータ活用、在庫管理・物流などが成功のポイントとなってきます。実際にオムニチャネルを成功させている企業は存在し、日々取り組みも進化しています。最新の動向をチェックし、自社のオムニチャネル戦略に役立てましょう。

キーワード

  • オムニチャネル
  • 生成AI
  • BOPIS