地方がいま再び注目を集めています。ローカルとも表現され、様々なメディアでもよく特集されています。
価値観が多様化したいま都市中心の価値観が揺らぎ、ローカルも可能性にあふれているという考えが広まっています。
この記事では、ローカル人気の背景や魅力、そして今後どうなっていくかについて分かりやすく解説します。
長らく続いていた都市集中の構造は、コロナ禍をきっかけに見直されました。
テレワークやリモートワークが広まり、地方移住や二拠点での生活も十分に実現可能な選択肢となりました。都会にいなければ仕事ができないという考えは古くなり、地方にいても同じクオリティで働ける環境が整ってきているのです。
この動きは単なる脱都会ではなく、地方が新たな価値創造の舞台へと変化していきているということです。企業と移住者が連携してローカルの魅力を発信したりと、共創というキーワードをもとに文化・産業・観光が結びついています。
SNSや動画サイト、ECの登場により、ローカルの発信力は急速に伸びました。
SNSで紹介された地方グルメがバズり、ローカルのクラフトブランドがECで注文を受けるというデジタルを中心とした流れができています。
また、クラウドファンディングを活用して資金を集める地域事業者も増えています。ローカルでのスタートアップという考え方は一般化しており、ビジネスの場としても注目を浴びています。
いま消費者の価値観は、ストーリーやエクスペリエンスに重きが置かれています。「安い、早い」も大切ですが、さらに「どこで、誰が、どんな思いで」などそこにある理由が注目されるのです。
サステナブル、エシカル、ローカルというキーワードは、一部の流行ではなく、社会課題解決のための消費行動として大きなものになってきています。
こうした変化がローカルの魅力の再発見を促し、ストーリーのある商品や買い物のエクスペリエンスとの出会いを後押ししています。
ローカルの最大の魅力の一つは、食とものづくりにあります。その土地で育った素材や気候、風土が根付く商品には大量生産品とは違った魅力があります。
例えば、岐阜県の和紙、愛知県の味噌など、いずれも地元の歴史と人々の営みが生み出したものです。その土地でしか生まれない商品が、いまの消費者にとっては新鮮に映っています。
特に、地域の素材を使ったクラフトビールやジェラートが人気で、若い世代のクリエイターが地域産業をリブランディングする動きも活発です。
ローカル経済を動かす鍵は、地域の中でお金とものが循環する仕組みをどう作るかです。
経済の中心を担うのがローカルスーパーや商店街、道の駅などであり、単なる販売拠点ではなく、地域のつながりを支える役割として機能します。
近年では、違う複数の企業同士が協力して共同配送を行う例も増えてきていて、人手不足や燃料費高騰といった問題を地域一丸となって乗り越えています。
こうした小さな経済圏は、サステナブルな地域社会の基盤にもなります。
ローカルの強みは、人の関係性にもあります。
マルシェや地域規模でのフェス、移動販売といった人と密接に関わる仕組みを通して、地域の人のつながりや、観光客を巻き込んだ新しい価値観を生み出すことができます。
地方では、商品を買う・売るといった行為の中に、共感や信頼という感情もより介在しているのではないでしょうか。
そうした人との繋がりが温かみを作り出しているのです。
中部地方では最も古い焼き物の産地である常滑は、若い世代の陶芸家やデザイナーが集まるクラフトタウンへと進化しています。
もともとは急須やタイルの生産地として有名でしたが、古い窯元跡とリノベーションしたカフェやギャラリーが増え、クラフトマーケットの「やきもの散歩道」では観光とものづくりが組み合わされています。
地元の陶磁器文化を継承しつつ、新しいブランド価値を誕生させるという地域リノベーションが行われています。
岐阜県の郡上八幡は「水のまち」として有名で、現在は古くからの町並みを守りながら地域資源を活かしたサステナブルな観光とものづくりを展開しています。
食品サンプル産業や郡上おどりといった伝統文化を中心に、移住者や若い世代のクリエイターが関わる新たな動きが活発化しています。
古民家を改修したシェアスペースやゲストハウスも増え、観光だけでなく、居住ができる地域としても注目を集めています。
多気VISONは、食・健康・文化をテーマにした地域共創型のリゾート施設です。
伊勢自動車沿いにあってアクセスも良く、日帰りの観光や宿泊施設に泊まっての観光もできます。地元の農産物や工芸品、食が集まり、年間数百万人が訪れる大人気スポットです。
施設内では、三重県の食材を使うレストラン、地元の木材で建てられた温浴施設、伝統工芸体験などを楽しむことができ、三重の文化が詰まっています。
単なる観光地ではなく、三重県の魅力を可視化し、サステナブルに循環させる拠点として地方創生の要になっています。
地域の商店街や自治体でもデジタル化が急速に進んでいます。
キャッシュレス決済や電子クーポン、在庫連携システムなど、見える化によって地域の競争力を高める動きが広まっています。
こうした流れにより、地域の事業者がデータを活用して顧客理解を深めてよりきめ細かいサービスを提供できるようになりました。
DXが進展することで、デジタルが地域を生かすための仕組みとして機能しています。
地方発のスタートアップも増えていきています。
農業にAIを導入するスマート農業や、地域通貨アプリで商圏を活性化するフィンテック、観光データを分析して地域経済を見える化するプラットフォームなど、社会課題を解決するための事業などがあります。
こうした企業は、地域貢献を重視するのが特徴で、地域に根差しながら外部との連携を積極的に進める開かれた起業が注目されています。
企業・行政・住民が協力して地域課題を解決する共創型エコノミーが広がっています。
SDGsやリスキリングプロジェクトなど、ローカルを社会実験のフィールドとする取り組みが各地で進行しています。
地方はいまや、単に支援される存在ではなく、新たな社会モデルを生み出す実践の場所としても活躍しています。
ローカルは、これからの分散型社会の中心となる可能性を持っています。
都市と地方で分断するのではなく、お互いを補完しあうネットワークとして繋がることで、日本全体の持続性が高まります。
まだまだ災害・エネルギー・雇用といった課題は大きく存在していますが、地域単位での自立と連携がますます大きな意味を持つようになってくるでしょう。
作る・使う・戻すという循環型の地域経済が注目されています。
再生可能エネルギーやフードロス削減、リサイクル物流など、環境負荷を減らしながら経済を回す仕組みが広がっています。
地元で生まれた資源を地元で使い、また次の価値を生むといった地産地消もローカルの持続可能性を支える鍵となります。
企業が地域課題に関与し、共に価値をつくる動きも進んでいます。
地方自治体と企業の連携によるプロジェクトは、地方創生とビジネスの両立を実現する新しいモデルです。
例えば、商店街のDX支援や観光データを活用したマーケティング、農産物ブランディングへの企業参画などが増えています。
ローカルはいま、社会を再設計する場所の可能性を持っています。
そこから生まれるアイデアや仕組みが全国の未来を形づくっていくのではないでしょうか。